桜井 『スマッシュブラザーズ』を出してみていろいろと思うことがありまして……。
永田 いきなり反省点から(笑)。
桜井 はい。多いのが、少し遊んで奥の深さをまったく感じないまま遊び終えてしまうというケース。
岩田 僕らが仕込んだ本質を理解していただいたような反応(やり始めてすぐは、おもしろさの核が見えづらいが、やり込むうちに技術に裏付けられたアナログ風なシステムが体感でき、それがもどかしくもアツい盛り上がりを生むという内容)と、"誰でも簡単に遊べて楽しいが浅い"、という反応と極端なんですよ。
操作に慣れてない人からは「思うように動けない」点が、対戦ゲームのとっつきにくさだとよく聞く。
スマブラ64は、強い攻撃を出したい時はスティックをはじいてスマッシュ攻撃、上空にいる相手に攻撃したい時はスティックを上に傾けてAボタンと、非常に直観的な操作ができます。
簡単に操作できると思いきや、「着地キャンセル」という、地元最強からステップアップできる要素がある。
他にも小ジャンプやシフト入力や慣性台降りなどの応用技術があって、
クセになる操作性だ。
だからトレーニングモードは病みつきになりますね。
ネット対戦より長時間やっちゃう時もありますよアレは。いやこれは人によるか……。
ネトスマって、即死は当たり前の世紀末ゲーを好む人ばかりだと思われてますけど、
身内で和気藹々とプレイするエンジョイ勢の方もいて、
パーティゲームと対戦ゲームで両立できてると思うんですね。
深入りしすぎて独自の進化を遂げたネトスマ
岩田 ひとりで遊ぶより、多人数で遊んだほうが圧倒的に面白くて。
それは商品としてはある意味"いびつ"なのかもしれないけど、こういうのってなかったと思うし。
(中略)
遊んだ人全員が深さを感じるとは限らないし、多人数で遊ぶことに重点を置いているのでひとりで遊ぶときに弱いという部分も含めて、とても隙のある商品なんですよ。
スマブラをカンタンに遊べるゲームだと認識してる人が、
深さやアツさを味わうことなく次のモノに移っていくだけならさみしいと、岩田氏は話す。
岩田さん、
ネットには深さを知りすぎて迷宮から出られなくなったネトスマ勢というコアな人達がいますよ!
トレモもターゲットも面白い。ひとりでも多人数でも長く遊べてしまう恐ろしいゲームである。
噛めば噛むほど味が出る
桜井 多人数対戦のために、ひとり用の部分をかなり切ったんです。
(中略)
切った部分はほかにもあって。
たとえば格闘部分もマニアックにしようと思ったら、もっとぜんぜんできるんですよ。
空中での回避とかガードとか。
永田 そうでしょうね。
桜井 でもそれは狙いじゃないわけで。
例として、『ストU』と『ストZERO3』をくらべたら、
『ストU』のほうがシステムとして簡素じゃないですか。
でも、ハメがあるから、投げコマンドが簡単だからという部分でどんどん変わっていくうちに『ストZERO3』になった。
で、わからない人にはいろいろやることが多くてわけがわからなくなった。
キャラクターの性能みたいなものの味も出にくくなった。
共通のシステムというのが全員にあるならば、最終的にどのキャラを使っても変わらなくなってしまって。
となると、テレビゲームが持っている素材の味を活かしてるのはやっぱり『ストU』のほうだと思うんですよ、いまやっても。
(中略)
で、『スマッシュ』の目指したのはゲームが持ってる要素の味を活かすという方向なんです。
初めてネトスマを見た人は「スマブラってこんなゲームだったのか……」と
おかしな動きをしてるスマブラを見て言う。奥が深いんですこのゲーム。
ネトスマのせいで。
着キャンと小ジャンで軽快に動けるようになったら、
対空や着地狩り、コンボに起き攻めとやり込み要素が他にも膨大にある。
やり込むとキャラクターが持つ性能の違いやゲーム内の法則が分かってくる。
遊ぶのに最低限必要な知識と操作が簡素であっても、
プレイヤーが新しい仕様や立ち回りを見つければ十分マニアックで奥深いものになると思う。
参考書籍
全文を読みたい方はこちらの単行本で。
「ファイナルファンタジー」や「バーチャファイター」など、ゲーム全般のコラムが収録されている。
彼女と楽しくゲームを遊ぶのは可能か、というテーマもある。スマブラは色々な話題の中の一つ。